『どんとこい、貧困!』湯浅誠

ISBN:978-4652078464 2009年 理論社

☆☆☆☆☆

「よりみちパン!セ」叢書のひとつ。少し前に雨宮処凛の本を読んだときに出てきてたので、10代向けなら噛み砕いてあるのではと思い、読んでみた。

貧困、という言葉が言われるようになっても、まだ遠い話のようにも思えます。ただ、私も官製ワーキングプアにほぼ該当する身分ゆえ、自分がどういう立場なのかも(今さらですが)知らないといけません。

生存することだけが「生きる」ことだろうか?と著者は訴えてます。友達と遊びたい、興味のあることにチャレンジしてみたい、おしゃれしたい、美味しいものを食べたい。それって贅沢なことじゃないよね、と。

人と繋がる、社会的な存在でいることには、多少のお金の余裕が必要。でも、一生懸命、フルタイムで働いてもそれが叶わないなんてどこかオカシイと思わない?

まさに、その通り。今まで私が幸せに生きてこれたのは親や夫のお陰だ・・・ありがとう。私にはイザというときに頼れるもの「溜め」があります。
でも、家族のたすけがないひとだっています。そういう人だって、同じようにもしもの時には、社会が安全ネットを張って助けるべきじゃないか、という主張です。

何をどうしたらもっといい社会になるのか。問題意識を発見すること、自覚することのために、適した本でした。

説明のしかたが、身近で納得できる例を使い、整理された説明で納得できる。
語る言葉も、読者と同じ目線から語っていて偉そうじゃない(活動家は何かと怖そうで偉そうに語るからいやだよね、と著者も言っている)
100%ORANGEのイラストも怖がらせなくて良い。

たくさんの人のなかにこういう考え方が広がっていけば、もう少し温かみのある社会になると思いました。

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『イケメン美術館』中山庸子

ISBN:978-4-562-04049-0 2007年 原書房

☆☆☆★(3.5)

美術の高校教師でもあった著者の心を捉える「イケメン」を、実際に見たときの思い出とからめて顕した一冊。

旅先で「いい男まつり」をこっそり開催している私にとっては、やっぱりそうだよ!とわが意を得たりの視点です。

美術・芸術を楽しむのには、それぞれの観点があるでしょう。美術史の観点、名声を得たものを見る、貴重なものを見る、お気に入りの作家、お気に入りの国・・・などなど。

私はグッとくるかどうか。

色気が出てるものとか、はみだしちゃってるものがあるとか、そういうものには強く興味がわきますね。反対に、整ったもの、というのも時代をうまく乗せてたりして面白いことも。

面白さではもっと評価したいけれど、これがお気に入りのイケメン!というのに、図版が小さい&モノクロ。この程度にするなら文庫書き下ろしでもよさそうです。
ラファエロやミケランジェロ、ダ・ヴィンチに紙幅を割いているため、内容はイタリアのフィレンツェ、ローマ、ヴァチカンが主で、あとはフランスのルーブルが少し。

フィレンツェに旅しながら、ウフィッツィに行かなかったんですよねー。また来るための口実、と取ってあるんですが、早く行きたくなりました。

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『恋文の技術』森見登美彦

ISBN:978-4-591-10875-8 2009年 ポプラ社

☆☆☆☆ こんなにお手紙書いてたら、研究どころじゃないよ!

一筆啓上。文通万歳!
京都の大学から、遠く離れた研究所に飛ばされた男子大学院生が一人。無聊を慰めるべく、文通武者修行と称して京都に住むかつての仲間たちに手紙を書きまくる。手紙のうえで、友人の恋の相談に乗り、妹に説教を垂れー
」書籍帯より。

能登半島でくらげ研究のため送り込まれた守田一郎くんが、半年少々の期間に書いたお手紙集。恋文の技術は習得できたのか?

お相手からの返事はなく、ひたすら守田くんが書いたものがお相手と時系列順に並べてあります。

手紙の相手は、京都に残る友人マシマロ小松崎くん、大王と呼ぶ美人の大塚先輩、以前家庭教師をしていた小学生の男の子、妹、そして恋文の相手伊吹さん。

お返事が書かれていないので、読み手は守田くんが次に書いた返事から推測していく楽しさがあります。
しかも、この相手はそれぞれゆるくつながっているので、小松崎くんとのやりとりで一部不明だったことが、今度は大塚先輩へのお手紙で判明したり。パズルみたい。
相手によって、文体が違いを見比べるのも楽しい。同じことを伝えるのに、微妙に変わってます。

どこまで本気かという内容のであっても、研究の行き詰り感や、大学を出たらどうしましょうという不安を吐露するお手紙も混じります。
自分を装飾しつつも、自分を客観視もしていくのが手紙の醍醐味でもあり。そのあたりの自意識のあり方もなかなかです。

モリミーは憧れのあの子を思って悶絶してるのを書くのがピカイチでしょう。
ダメダメくんと見せかけて、熱いハートがたぎってます。社会的、金銭的にはイケてなくても、人として魅力あふれまくりの好青年・・・(さわやか、とは違う)。

相変わらず甘酸っぱいモリミーのお話。へたれくんの奮闘を読める作品でした。
腹黒さが出ていないけれど、それはお手紙に守田くんが腹黒さを出さなかったと受け取ることにしました。ダーク守田くんも読んでみたいが、そういうのは投函されないのよね。

恋文とは、なにかの定型があるわけじゃなく。恋心があれば、恋文となる。技術を駆使しないほうが伝わる・・・ことを、膨大な手紙を書いて気づいたようです、守田くん。

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『星間商事株式会社社史編纂室』三浦しをん

ISBN: 978-4480804204 2009年 筑摩書房

☆☆☆

さくっと読めて、読後感さわやか。ちょこっとコミケの事情もわかる特典つき。

■5時に帰れる部署がいいと申し出た川田幸代の転属先は、「社史編纂室」。なぜって、会社以外の時間は、オタク趣味に没頭したいから! コミケに出店しなくちゃいけないので、原稿書きに忙しいのだった。

同僚といえば、切りのいい創業年を越したのに、ちっとも進んでいない社史編纂室の仕事ぶり。ここにいるのは、いるらしいが見たことがない幽霊部長、ふらついてる課長、合コン三昧の男、ひらひらの洋服と胸元で誘う年下の女子。

戦後日本の高度経済成長時、会社もイケイケドンドン、事業拡大していたというのに、なぜか語らないOBたち。そこにどんな暗闇が潜んでいるのか?

キーになるのは星間商事の名前入り原稿用紙。東南アジアの小国サリメニ共和国との関係は?

■幸代のオタク趣味が、会社が闇に葬った出来事に光を!

会社員もののファンタジーというのか・・・ミステリほど謎解きはしないし、恋愛モノでもなく。人が自分の能力を発揮して一致団結して頑張るのって爽やかです。
おじさんがいきなり編纂室でも「同人誌」発行しようって叫ぶのはびっくりですが、ファンタジーならいいのだ。

■三浦しをんの書く男女の関係性って奥ゆかしくて、いじらしくて好きだ。

それぞれがそれぞれの世界を持っていて、でも、相手を必要としていて。支配関係じゃなくて、寄り添うような。

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『雨宮処凛のオールニートニッポン』雨宮処凛

ISBN:978-4-396-11086-4 2007年 祥伝社新書

☆☆☆☆

雨宮処凛がパーソナリティを担当したネットラジオ番組「オールニートニッポン」2006-2007年から収録。

ひきこもりとニート、それから派遣労働のことをきちんと考えたことなどなかったなと反省させられる内容。
やりたいことをしたい、というものの、実際のところ私も官製ワーキングプアっていうカテゴリに入るというのに、のん気にしててごめんなさいだ。

読んでいくと、閉塞感を打ち破り、現在の硬直した格差(身分というか)を解体するには、戦争しかない、と雑誌に論文を書いた赤木智弘をはじめ、そこまで悲惨なのか!? 驚いてばかり。

自分と他人と比べないから、いや→正確にいうと、「お金よりやりがいを選んだ」と思うことで気づかないことにしてたけど、キャリア10年でどんどん給料が下がるって問題ありです。
同一労働、同一賃金。

雨宮処凛をはじめ、ほとんどが同世代なのも同じ日本にいながら違うものを見ているのだというのも衝撃でした。
使い捨て労働力として扱われることには、反対したいと思う。細切れの仕事でも、1ヶ月働けば家賃と食費と、遊興費もちゃんと残るだけ受け取れるようにすべきです。

最後の回が大槻ケンヂなのが、世代だなぁと微笑ましくもあり。

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『猫と庄造と二人のおんな』谷崎潤一郎

1951年 新潮文庫

☆☆☆☆

猫がタイトルにあったので何気なく読み始めたら、谷崎~すごいな。いい。

話の真ん中に置かれているのは年寄り猫(でもまだキレイらしい)のリリー。
そして、リリーを溺愛している庄造。
後妻の福子、元妻の品子。それから庄造の実母おりん(庄造夫婦と同居)。

うだつの上がらない庄造は、おりんと福子一家の差し金で、気が強い品子を追い出すことに成功したものの、福子はだらしがない女で、暮らしはじめたところで庄造は好きなのかどうかもよく分からない。
庄造が無償の愛をただただ注ぐ対象は、猫のリリーである。

追い出された品子といえば、夫婦でいた間はいつも二人の間に居たリリーが憎らしかった。しかし、いずれだらしがない福子に嫌気がさして自分を家へ迎え入れるだろうとの目論見から、庄造との関係を繋いでおくためにも、せめてリリーを下さいと哀れな嘆願。

芝居を打った甲斐あって、庄造夫婦からリリーを連れてきた品子、あんなに憎かったはずのリリーが可愛くなってきたのはどうしてか・・・ 
なぜ自分はこの可愛らしさに気づかなかったのか、それこそが家を出された理由だったのではないか。自分にこんな愛情があるとは思わなかった・・・

リリーを手放した庄造、受け入れた品子はリリーを可愛がる自分の愛情に驚くのでした。

とにかく猫への愛情の偏りぶりが、そうそう、と唸ってばかりの核心をつきます。
庄造、品子ともに自分を本当に理解してくれるのは、この猫ばかりと話しかけ世話をする姿、他人とは思えない猫バカぶり。
人間への愛は損得、世間、自己主張、と上手く行かないことが多いのに、猫に対しては奴隷である自分の姿こそが本当の自分と感じるほどの低姿勢に。

人を、女性を良く見ている作家だ。いまさら気づいたけど、そのうち大作も読んでみたい。

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『ウィーントラベルブック』塚本太朗

ISBN:978-8085-8523-5 2009年 東京地図出版 1600円

☆☆☆☆

ドイツ雑貨店マルクトのオーナーでもある塚本さんが、ウィーンへ取材旅行。探して見つけたお店やアーティスト、会社(カメラの「ロモ」とか)などを紹介。

はー、ウィーンに行きたい!行きたくなります!

観光ガイドは「~歩き方」でチェックして、こちらは蚤の市、リサイクルショップ、ステキカフェ☆、手芸店、などなど。オトメセンサーの針がびゅんびゅんくる可愛いものをチェック。
スーパーのオリジナルブランドや、老舗のスウィーツも抜かりなく掲載されてます。

いけなくても、ぱらり眺めているだけでわくわくしてきます。

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『オバマ・ショック』越智通雄 町山智浩

ISBN:978-4-08-720477-3 集英社 2009年

☆☆☆☆

オバマ大統領がショックなのか・・・と思い手に取ってみた。新書だからタイトルにあまり意味はなかったのでした。

アメリカという国がたどった政治的視点からの歴史、2大政党の支持者層の変化と、選挙戦術が中身の半分を占めます。オバマとは直接関係ないけれど、アメリカ史なんて全然知らないので、分かりやすくまとまっていて読み甲斐あり。

さらに歴史のなかでアメリカ人が「土地」をどう自分のモノにしてきたか、を示しながら、サブプライムローン問題が起こった経緯について語っています。市民にとってのアメリカン・ドリームは家を持つこと、という見方は新鮮でした。マイ・ホーム。

土地や家屋の価値が今まで下がったことがなかった、って!日本のバブルの話は耳に入ってなかったんでしょうね。単に金儲け目的かと思っていたけれど、政府からの老後の保障がないから、手を出したというのが大国アメリカの別の顔です。

アメリカ在住の町山氏の実体験も語られ、日本人で、コネもないのに、もどんどん貸そうとしてたという状況が挿入されているのも、対談ならではでしょう。

そしてこうなったアメリカが「オバマ大統領」選んだ理由、というのが最終的に語られます。

オバマはアフリカ系アメリカ人の代表ではなく、自分の民族アイデンティティがどこにあるのかが確かでない(今のアメリカに増えている)アメリカ人として、新しい大統領と言えるのかも。
疲弊して、行き詰ったアメリカを外から=アウトサイダー、やってきて助けてくれるスーパーマンに重ねて越智氏が話すのは、大統領選で涙を流す人たちの映像と合わせて考えると納得します。その期待が裏切られたと感じたら、どうするんでしょうね。

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『勝てる読書(14歳の世渡り術)』豊崎由美

ISBN:978-4309616520 河出書房新社 2009年

☆☆☆☆☆

14歳のときにこういう案内本を読めていたら、もっと生意気ないい感じの子になったかもと思わせてもらった。35歳でも、もちろん楽しいけど。

世界は広い、色んな人がいて、考え方も行き方もいろいろあって、その一端を感じられる読書ってやっぱり楽しい。震える。

いわゆる教科書的な良書(と言われているもの)ばっかりのホコリ臭そうなものなんて、最初から興味ないし。だいたい、読みたい!って思わせるような書き方してません。

それから、博覧強記の素敵な文系おじさまとかがすすめる本も、なんだか凄すぎて、やっぱり自分が読みたい気にはなれない。

そんな案内本の世界に、教養系でもなく、知性高すぎでもなく、思わず読みたくなってしまう本をたくさん紹介してくれているのがコチラでした。
自分の星座をつくろう、ということで「デス座」「新訳座」「キモメン座」などと分かれています。

新旧おりまぜてあり、トヨザキ氏がどこに興味を持っているのかを読むと、私も引き込まれるものがたくさんありました。

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『電波男』本田透

ISBN:4-86199-002-5  2005年 三才ブックス 1500円

☆☆☆☆

よかったっていうんじゃなくて、よくこんなにたくさん書いたなぁで4つにします。熱意を感じます。

オタク(キモメンとも同義語で使用してます)な「俺」の愛を求める叫びが400ページにわたって展開。
80年代頃より恋愛至上主義が世間に広がり、結果、恋愛資本主義の時代が到来。
女性は金のあるイケメンを恋愛ヒエラルキーの上におき、オタクたち金もなくブサイクな男を人間以下のカテゴリへ落とした・・・ああ涙の物語。うんうん、それは人間を一面でしか見てないとお怒りなのはごもっとも。

ただ恋愛至上主義、というのは理解できたんですけど、後半さらに熱弁をふるう「萌えレボリューション!」は私には腰が引けちゃったのでした。

男を金と顔でしか見ない女性には、女を性的欲求のはけぐちくらいにしか見ない最低のDQN男ばっかりだー! でもキモメンは本当の平等の愛を求めるがゆえに、いつもそんな女性に馬鹿にされてしまう・・・。

そうして馬鹿にされると殺人を犯したり、暴行してしまう最低の人間になってしまうところを救ってくれるのが!
「萌え」。

まず、人によって「萌え」の対象はさまざま。相手を選ばない。
二次元の世界の子に「萌え」た場合、その子は決してあなたを裏切らない。
ので、みんなが脳内でピュアな恋愛を繰り広げていれば、暗黒面に落ちることなく平和が訪れるのです。

・・・これはこれで、あまりに純愛を求めすぎる繊細な要望だなと思うので、おおそうだ!とはならないものの、私も脳内劇場を持っているので、平和になるというのは1票いれてもいいかも。
現実世界が殺伐としているこのごろならば、心の幸福をもたらす「萌え」をさらに普及していくのも手なのか。

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