『マルタの鷹』

The Maltese Falcon 1941年 アメリカ 101分

監督/ジョン・ヒューストン
ハンフリー・ボガード、メアリー・アスター、グラディス・ジョージ、ピーター・ローレ
バートン・マクレーン、リー・パトリック

★★★★

ふーん、ふーん。ハンフリー・ボガードが舘ひろし派閥(本当は逆だよ、舘ひろしがボギー風ってことだよね)に見えて、時々妙におかしさがこみ上げて来た。
ごめんね、ボギー、かっこよかったんだけど、今じゃこんなにカッコいい人っていないもので、まぼろし~?な気分なんだよ。

ダシール・ハメット原作ということで、前半はともかくラストの美女を警察に引き渡すあたりに、ハードボイルドの骨格がぐっと浮き上がって、痺れたわ。

ボギーは、顔のつくりがいい男ってわけではない・・・よね? とりあえずカタチは私の好みではないのだけれど、役のスペンサーはカッコつけてない男でありながら、行動がカッコいいい男、だ。頭も切れまくってる。
モテモテで、女性のあしらいも上手いのに、女に溺れないのねー。やるなぁ!

映画を見てて、ボギーはそれほど身長が高くないのねってことに気づく。ほう。美男子でもなく、大柄でもない男が、美女をめろめろにする・・・最高だわ。

この時代の映画を見るたびに、日本が清貧とか言ってたころのアメリカの豊かさを感じて切なくなります。で、なぜか今よりも<外国>ってことを強く感じますね。なぜだろう?
発音が時代がかってるからかな?

『アビエイター』

The Aviator 2004年 アメリカ 169分

監督/マーティン・スコセッシ
レオナルド・ディカプリオ、ケイト・ブランシェット、ケイト・ベッキンセイル、アラン・アルダ、
アレック・ボールドウィン、イアン・ホルム、ジョン・C・ライリー

★★★★★

ディカプリオが出ていれば★は甘くなる・・・が、3時間近い上演時間のわりにスピード感があって、時代の雰囲気が分かりやすく。また、人物造形も単純すぎず複雑すぎず。
つまりポイントがブレずに物語が進行して視聴者にやさしい1本。

窮地に立たされる、つらい目にあうディカプリオは天下一品だわ。ママが助けてあげる!といいたくなります。裸で試写室に籠って、つめも髪も伸び放題でも、まだ何とかしてあげたくなる可愛さ! はー、好きな女性には甘えるところがまたキュンキュンでした。

1920年代~1950年代あたりの、アメリカンドリームの世界。ハワード・ヒューズについて何も知らなかったけれど、世界の富の半分を持つ、とまで言われたらしい。ひいー。

(金に糸目をつけないとは、このことか!)
『地獄の天使』制作費100万ドルって確か言ってたけど、この時代の100万ドルって今でも日本映画なら夢物語です。桁外れという言葉がホントにふさわしい破格のリッチマンですね・・・

ロケ中のキャサリン・ヘップバーンに会いにいくのに水上飛行機で迎えにいくわ、自宅のゴルフ場みたいなところに着陸するわ、わかりやすい大富豪っぷり。

柱になるのが3つのポイント。

1、超リッチな飛行機オタクの青年が、夢のため時にタガが外れたかのような猛進ぶりで航空界の新しい道を開いていく爽快さ。
最高時速更新、大きさが最大の飛行機の設計、大西洋航路に打って出る強気さ。

空を飛び、スピードを怖がらないハワードの振る舞いが、ああ、この人ちょっとズレてるんだなって思います。

2、幼い頃に母から植え付けれらた<世界はバイキンで満ちている、安全なところはない>が、社会との軋轢とあいまって、彼の中で増幅してバイキン恐怖に襲われていくさま。

母が使ったものと同じ石鹸を正装時もポケットに持ち歩き、プレッシャーで心が押しつぶされそうになると、手を洗うことで消そうとする行為。とても痛々しい。

付随して、自分のなかの決め事がおおい脅迫神経症的なふるまい。生々しい肉は食べず、他人と皿を共有せす、酒は飲まずに蓋つき牛乳を飲み、タバコも吸わない(嫌悪している節があった)
どれも、子供時代にきっと母親から教育されたことと推察されます。

3、不潔を嫌うけれど、心の安らぎを女性に求める女好きの面。

キャサリン・ヘップバーン、エヴァ・ガードナーとの交際、巨乳好きってのが可愛いポイントであり、子供のまま大人になってしまったようなハワードを映します。
子供っぽさと経営者として大人の世界に生きる面の、バランスが欠けた感じでした。

映画では、戦後、軍から依頼を受けた航空機を納品していないことを横領だということで、公聴会に引きずり出されるものの、思いのたけを素直にぶつけまくり、反対に議長をやり込め、巨大な<ハーキュリー>の試験飛行に成功を収めるところで終幕となっています。

気になって、その後のハワード・ヒューズの人生を調べると、精神の安定を欠くことが続き、居室にしたホテルの部屋でなくなったそうです。

そこそこが幸せ、ともいえるけれど、これだけの財力と容姿(長身のいい男)で当時の輝ける大女優たちとつきあって、好きな飛行機にのめりこんだ人生、傍目で見る分には波乱万丈で興味のわく人生でした。

バランスを欠いた人って、友達にはなれないかもしれないけれど、面白いのだった。
そして、その素材が飛行機っていうのが、夢いっぱい。今だとマイクロソフトとかアップルとか、IT関連のリッチマンの話が多いけれど、飛行機野郎というのが古きよき時代、現実に手触りがあった頃のお話なのでした。

『ブラック・スワン』

Black Swan 2010年

監督/ダーレン・アロノフスキー
ナタリー・ポートマン、ヴァンサン・カッセル、ミラ・キュニス、
バーバラ・ハーシー、ウィノナ・ライダー

★★★★

友人に、見てー!と言われたので見てみた。バレリーナ、ニナの追い詰められていく様子が、想像できる範囲での身体的な痛みで表現され続ける、逆剥け地獄・・・!ギャー!

物語は、あ、そういうラストにしたのね。残念だよ、ママから解放されて、自立して黒い羽で羽ばたくのかと思ったら、羽ばたいたが命を落としてしまったー。おお。

じりじりじりじりっと不安がつのって押しつぶされそうになっていくばかりのニナの心情に、付き合って行かされる2時間。疲れているときには見れません。

ナタリーが頑張ったね、賞賛をおくります。

舞台メイクもクールでステキ。衣装もゴテゴテしてなくてよかったな。
ニナがステキなドレスの上に、いつものまじめな女学生コート(しかもピンク)を着るとこなど、徹底してニナが子供として扱われ、自分でも子供だと思っている痛々しさが、たまりません。

だけど、肉体を使うパフォーマーであれば、ニナの位置にいくまでにも散々ライバル関係のなかでもまれているのではないかと思ってしまったけれど、4羽の白鳥のひとりと、プリマはまったく違うものだということなのですね。

たまたまニナがバレリーナだったけれど、基本的にはバレエの話ではなくて、娘に自分の夢を追いかぶせながらも、娘が自分よりも高い評価を受けることを憎む、毒親と娘の物語であります。
ママが1番怖かった。

黒鳥だけでもよいから、もっとダンスシーンを入れてほしかったなぁ

あと、ウィノナ・ライダーが物語とは別のところで、配役の時点で痛々しく。いっそ、ドスの効いたうらぶれたオバちゃん役で、再ブレークとか期待したい。

『ふたりの5つの分かれ路』

5×2 フランス 2004年

監督/フランソワ・オゾン
ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、ステファン・フレイス

★★★★

いいか悪いかっていうより、ああ、すれ違う心の動きがたまらない。

冒頭で、離婚手続きをしている夫婦の、ある時期ごとに短編風に切り取って、過去へとさかのぼるスタイル。

倦怠期、出産、結婚式、出会い。

最初の場面での夫ジルのレイプまがいの行動が許せなくて、というか、私はコレで、ジル=最低な男だと烙印を押してその後のエピソードを見ることになった。あ、だけど、どの時期も妻マリオンから見た夫は、いまいちダメ男なのだった。

乱交パーティーでの出来事を嬉しそうに語る。

異常分娩となったのに病院に来ない上に、生まれてから到着したかと思ったら、保育器のなかの弱々しいわが子にどう接していいか分からず、また逃げ出す。マリオン、あきらめるの早いって!

結婚式の後、ホテルにもどったら疲れて寝てしまってた。・・・これは残念だけど、仕方ないかもだな。ダメじゃないけど、根性なしって感じだ。

出会いのとき。ジルは当時の恋人とリゾート地に来てるのに、ひとりで旅行に来ていたマリオンに気持ちが動いて、いい感じになる。すぐ目移りするんだな。

というわけで、誠意の薄い男なのだった。

お互いに求めるものがすれ違い、怒りやあきらめを体にためていく様子が哀しい。が、こういう事ってホントあるよね、とも思う。

オゾン監督、意地悪よね。意地悪さを、いいときも悪いときもあるしさ、っていう言い方で見せているように感じました。

教会で挙式しないフランス人の、民法による婚姻の手続きが興味深かったです。民法の条項を読み上げてもらうのですが、契約なのだなぁと面白かった。

『バレンタインデー』

VALENTINE'S DAY 2010年

監督/ゲイリー・マーシャル
ジェシカ・アルバ、、ジェニファー・ガーナー、アン・ハサウェイ、クィーン・ラティファ、テイラー・スウィフト、ジュリア・ロバーツ、キャシー・ベイツ、シャーリー・マクレーン
アシュトン・カッチャー、ブラッドリー・クーパー、エリック・デイン、パトリック・デンプシー、ジェイミー・フォックス、トファー・グレイス、テイラー・ローロナー

★★★☆

けっこう好みの顔が並んだので、3.5点。

話はだいたい想像した通り、見る前から分かるような展開の、バレンタイン@LAの群像劇。出演者たちは、どこかしらでつながりがあるのだけれど、『ラブ・アクチュアリー』のほうが、ぐっとくる人間模様でした。

アシュトン・カッチャーと、親友のジェニファー・ガーナーの2人が軸になっています。出演者が好きなら楽しめるんじゃないかと・・・

ジェシカ・アルバとジュリア・ロバーツはおまけみたいに出演。なんかジェシカにオーラなかったんですが、気が乗らなかったのかしら。

アシュトン、可愛いよねぇ 好みとは違うけど、無駄にデカイなぁという感じが可愛いんだと思う。

『プール』

2009年 日本

監督/大森美香
小林聡美、伽奈、加瀬亮、もたいまさこ、シッテイチャイ・コンピラ

★★★★

見てる間は、ふーん、ふーん、と思っていたけれど、見終わってみると楽園のようなゲストハウスの中に自分も入ってみたいなぁという余韻がふんわりと残る。

小林聡美へ、と娘から(伽奈)の<ほうって置かれた>という言葉のほかには、はっきりと誰も心の中は言わない。言わないけれど、それぞれに思って、それぞれに悩んでいるのよね、と沁み出でてくる。
自分の好きなことをしたほうがいい、という母親に、好きなことがしたいから自分を捨てたのかとたずねる娘。

私に娘はいないけれど、自分の好きなことだけしたいのはすごく分かるので、母親の立場って大きくて困難よのう、とドッキリ。反面。母親は自分(娘)を捨てるべきじゃない、ってのも分かるし。

楽園のようなゲストハウスの中、あ、これは母の世界・・・美味しいご飯も出てきて、安全で安定しているかのような世界で。

娘視点で言えば、祖母に預けれらたことを乗り越えられずにいたのを、本人に気持ちを伝えることで絡めとられていたところから、一歩外に出た、というあたりで映画は終わりました。

ところで見るたびに思うけど、もたいまさこって、全部知ってそうで微笑んでいるのに、実は腹の底が深そうに見える。静かな人ほど、怒ると怖いだろうっていうのと似てるか。

監督の好みらしいけど、人物の顔アップがないので、じらされてる気分でした。カメラは少し離れて、彼らの日常を映します。タイ人の子の顔、もっと見たかったのに。
美味しそうなご飯も、母娘が一緒に食べないので、遠くから見るだけー。フードコーディネーター飯島さんのお仕事が、ああ、もったいない!

『しあわせの雨傘』

Potiche 2010年 フランス

監督/フランソワーズ・オソン
カトリーヌ・ドヌーブ、ジェラール・ドバルデュー、ファブリス・ルキーニ、カリン・ヴィアール

★★★

傘工場の創業者の娘である、ドヌーブは会社を継いだ夫から飾り壺だとないがしろにされながら、2人の子供を育てあげ、いまは裕福な奥様として振舞っている。

労働環境の改善要求が盛り上がり、スト決行のさなか夫が倒れた。彼女は、創業者娘、現社長夫人として<夫がもどるまでの間>会社を運営することに。

明るく前向きな女性、というキャラのドヌーブはこの年でもキレイな人だなぁ・・と。かつて関係を持ったことのある、車を修理してくれた労働者の男=今は政治家、の助けや、家族の助けをうけ、工場も経営回復。

ついに、夫を放り出し、離婚するわ、と言い、議員になる!と選挙に出て当選。

ざっくり言えば主婦のサクセスストーリーだけど、がつがつした感じがないのが、監督の趣味とドヌーブの上品さでしょう。
トラックをヒッチハイクして乗り込むときの、足の美しさったら。

子供に対する態度も、ママらしいのだけれど、同時に別の人格を持った人間同士であるという線引きをするのが、フランスの親子関係なのか。

息子の父親が誰か? 候補がありすぎるのもスゴイわね、ってところ。いかにも、フランス的な展開です。

★3つなのは、どうにも展開がもっさりとしてたのと、邦題のせいで<傘>への期待がありすぎたせい。傘といえば、当然『シェルブール』なのですが、傘のステキな映像がちょっとしかなくて、案外がっかりしてしまった。
原題の意味は、<壺> お飾りの女、ということです。

『スクール・オブ・ロック』

School of Rock 2003年 アメリカ

監督/リチャード・リンクレイター
ジャック・ブラック、ジョーン・キューザック、マイク・ホワイト

★★

ううーん。これは・・・ ジャック・ブラックの魅力も不十分で、ストーリー展開も浅くてつるつるしすぎ。小学生向けの映画。

オトナがみ見ると、ストーリーの流れとは別に、ジャック・ブラックも友人も痛すぎます。大人がロックに熱中しててもいいんですが、その言い分が子供じみてて、薄っぺらすぎました。

最後まで見たら、いきなり盛り上がるのかなぁとわずかな望みを託していたけど、ダメでした。

『昼顔』

Belle de jour 1967年 フランス/イタリア

監督/ルイス・ブニュエル
カトリーヌ・ドヌーブ、ジャン・ソレル、ミシェル・ピコリ、ジュヌヴィエーヴ・パージュ、
フランソワーズ・ファビアン、ピエール・クレマンティ

★★★★

■ドヌーブ様が美しすぎました。高慢なブルジョワ!を体現してくれるカトリーヌ・ドヌーブ様~
衣装が素敵で、エナメル黒トレンチとか、けっこう刺激的なところも。きちんと仕立てのいい服を、着こなすドヌーブを見れればそれでかなり満足。

やせているので、クールな表情を見てると爬虫類の冷たさを感じました。

60年代の女性の立場というのがパリであってもこのくらいだったのかな?と不思議になりましたが、育ちがいいからというのもあるのか。男はいい気なもんですね。

■優しい医者の夫と不自由ないセレブ生活を送るセブリーヌ(23歳の設定におののく。どう見ても20代後半の落ち着き、さすがフランス女優は貫禄があっていいわ)は、夫との夫婦生活を拒否してます。
とても愛しているけれど、ダメなの・・・と、これは病気であるっていう解釈をしてるみたいですね。ふむ。

ただ、夢や妄想ではメス豚!スベタ!ブルジョワ女!などと、罵られてみたり、夫の手で御者のおっさんたちに鞭打たれて犯されたり。おお、けっこう屈折してそう。
表向きの<上品で美しい貞淑な妻>イメージからの逃亡のように感じたな。セルフイメージを抜け出したい、というもがきのよう。

映像に挟み込まれる彼女の少女時代に、なにやらトラウマの原因がありそうでしたが、そこは一瞬だけで、あまり重視されていません。

■貞淑な妻は、実は高級娼婦だった、というあらすじ説明は違うな。こういう物言いは、男目線かと。

自分の体や自分の官能に気づいていく女性の話として、見ました。貞淑な妻が妄想しててもいいと思うもの。

ラスト、娼婦の彼女に執心して自宅に押しかけて、悪いのは夫だ!と夫を銃で撃ってしまいました。で、犯人は逃走中に警官にみつかってやはり撃たれて死亡。

え?? 

全身麻痺となった夫を、自宅で甲斐甲斐しい介護をするセブリーヌ。自分のせいでこんなことになったのに、何だか楽しそう。女はコワイ。

ラストの夫の超快復は、彼女の妄想の一部でしょう。今までの妄想には、愛してるはずの夫は登場しなかったので、セブリーヌとしてはやっと夫を受け入れられるようになった、が、遅かった、という皮肉まじりかなと。

『アジャストメント』

The Adjustment Bureau 2011年 アメリカ

監督/ジョージ・ノルフィ 原作/フィリップ・K・ディック

マット・デイモン、エミリー・ブラント、アンソニー・マッキー、ジョン・スラッテリー、

★★★

美しくスーツと帽子をレトロな雰囲気で着こなす組織の男たちと、マット・デイモンの頑張りで★3つ。エミリ・ブラントもキレイです。

壮大なようで、ものすごく個人的な物語。組織が何なのかもすぐに明らかになるので、何に向かって主人公が抵抗するのかが丸見えに・・・ 

運命よりも、愛が勝つのだろうとすぐに思えてしまう流れは、ハリウッド映画ならば分かるのだし。

というわけで、予定調和的な進行となり、後半に見せ場のはずの扉を開けると離れた別の部屋につながっている逃亡場面も、なんだかつまらなく見えるのであった。残念。

これは、読んでないけど原作のほうが面白いんじゃないかと思います。

«『婚前特急』